野望渦巻く戦国乱世。恵まれた体躯(たいく)と膂力(りょりょく)を生かした槍(やり)働きで立身出世の夢を抱く藤堂高虎(とうどうたかとら)は主を求め流浪していた。天正四年、羽柴秀吉の弟・秀長に認められた高虎は仕官するが、秀長は“算盤侍(そろばんざむらい)”と呼ばれ、合戦を得意としない希有(けう)な戦国武将だった。黙々と金策に走り秀吉を支え続ける秀長の姿に、高虎はやがて新しい武将のあり方を発見する。「戦闘だけでは猪(いのしし)武者に終わる。これからは兵法、築城術、兵糧の調達、金銭の出納を身につけることが肝要だ」秀長の下で人心掌握術や経営術、建設術を学んだ高虎は、築城に才を発揮、その名を天下に轟かせ始めた。だが、秀吉の下で頭角を現わしてきた宿敵・石田三成が高虎の行く手を阻む……!
豊臣秀吉が天下人となり、二万石の大名に出世を遂げた藤堂高虎の前に、暗雲がたれこめた。主の秀長は逝去し、後継者・秀保が何者かに暗殺されたのである。宿敵・石田三成の仕業か?
大和郡山豊臣家は取り潰され、高虎は失意のうちに隠遁(いんとん)する。しかし、その才を惜しむ秀吉の招聘に(しょうへい)に応じ、三成への復讐の牙を隠して出仕する。やがて、民の疲弊(ひへい)を招いた朝鮮出兵や、三成を要職に据え体制固めを進める秀吉の政策に危惧を抱いた高虎は、徳川家康に接近。秀吉の死後、家康にその才を高く評価され徳川幕閣に参加、遂に関ヶ原で三成率いる西軍と対峙した……。
類稀(たぐいまれ)な先見の明と自らの変革で、激動の戦国時代を生き抜いた漢(おとこ)の熱き生涯!
時代:1573年(天正元年)〜1630年(寛永七年)
著者:火坂雅志
出版:祥伝社
発行:2004年9月
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